武道の振興・普及

熊本県(熊本市)地域社会(柔道・剣道)指導者研修会

期間 【柔道】平成22年8月27日(金)・28日(土)
【剣道】平成22年9月11日(土)・12日(日)
場所   熊本武道館
参加者 【柔道】48名(教員10名)
【剣道】76名(教員17名)
中央講師 【柔道】鮫島元成七段、楢﨑教子女子四段
【剣道】末野栄二範士八段、藤田弘美教士七段

概要

【柔道】

 研修会は、財団法人全日本柔道連盟が中学校武道必修化向けに作成した、『柔道 授業づくり教本』に則り講習が進められ、柔道を初めて学ぶ中学生男女への指導の要点について、実技を交えて県内の柔道指導者、保健体育教員、教育委員会関係者が参加し行った。
 1日目、最初に鮫島講師から、武道必修化では、事故・怪我が起きないよう、指導者は安全に十分配慮して授業を進める必要があること。また、学習指導要領の改訂で、中学校で武道は必修になったが、高校では武道は選択種目になった。高校でも柔道を選択してもらえるよう、魅力ある授業づくりを真剣に考える必要がある、という解説を行った後、実技の指導に移った。実技では、着装の確認、受け身の指導法から、投げ技の指導上の注意点(引き手を離さない、かける側は技をかけたあと、倒れこまないようきちんと立つ。危ない投げ方をしている生徒には間髪入れず本気で注意する)など、「怪我をさせない」指導に重点を置いて研修が進められた。
 2日目は、初日のおさらいをしたあと、楢﨑講師や地元講師らが技のかけ方の要点、中学生への指導の仕方(思春期の中学生に対する接し方、話し方のコツ)などの講義を行い、後半に、再び武道必修化向けの投げ技(大外刈り、大腰など)、抑え技、足技(送り足払い、出足払い)などの指導方法を学び、最後に簡単な乱取り稽古を行って講習を終えた。質疑の時間では、学習評価はどうしたらよいか、といった質問があり、鮫島講師は、技の巧拙だけが評価ではなく、着装や礼法、受け身の仕方など、評価の観点はいろいろある。また、試合も、相手を投げる、抑えるといった攻防だけが試合ではない、受け身の試合、着装の試合といった、お互いの「試し合い」として捉えるとよいだろうと述べた。そのほか、武道に割り当てられた授業時間は決して十分ではないので、初めから細かく指導するより、「最初は大まかに、最後はきちんと」なればよいといったアドバイスもなされた。
 今回は、参加者のほとんどが、熊本県下の柔道指導者(有段者)であった。今後、参加した各指導者が、中学校武道必修化に向け、それぞれの地域で積極的に働きかけを行っていくことを期待したい。

【剣道】

 開会式後、藤田講師が持参の資料を基に講話を行った。藤田講師は保健体育の指導要領の改正点を文部科学省からの内容を含め説明し、剣道の特性・楽しさなどを味わわせながら、体力作りや競争・共同運動が出来る授業作りを目指し、授業には剣道の専門家を育てたり、部活動の剣道を持ち込まないで欲しいと述べ、国士舘大学杉山先生の言葉を借用し、「道の入り口に連れて行くのが体育の授業である」と締めた。休憩後はDVDで過去の実践校での導入例を紹介し、実際に参加者が指導法を体験した。バランス崩し・2人組みでの目隠し歩行、木刀を使っての新聞切りなどを行った後、木刀による剣道基本技稽古法導入部分を学んだ。昼食後は末野講師が木刀による剣道基本技稽古法の技術指導を行い、質疑応答も活発に行われ、末野講師からは「相手は初心者なので安全管理には十分注意し、様々なケースを想定して指導して欲しい」とまとめた。休憩後は参加者が6人グループに分かれ、基本技稽古法の基本10を各班ごとにアレンジ作成し発表しあった。藤田講師からは「中学生には考えさせて思考能力を活用させるようにして欲しい。生徒たちは喜んで考える」と話があった。最後に全員で稽古を行い1日目を終了した。
 2日目は救急法を西嶋敏氏(熊本病院理事・教士七段)と山内俊雄氏(日赤救急指導員)を招いて行った。西嶋氏自身が剣道終了後に心肺停止状態になった実体験をもとに講話をし、山内氏がAEDを用いて救急救命法を説明し全員で実演した。西嶋氏は「事故がおきたらではなく、事故が起こらないように配慮して欲しい」とまとめた。その後1日目と同様に藤田講師がDVDで昨年開催の剣道文化講演会「中学校武道必修化に伴う剣道授業の展開」の冒頭部分を紹介した。また、自身の指導法の失敗談や経験談をふまえて「面などは2人組で紐を結びあう。色々な賞をあたえる」など具体例があげられた。午後からは竹刀を使って1対1、1対多数での指導法を行った後、8人組に別れ基本打ち演武を各班発表した。最後は中学校武道の指導法のコツについて質疑応答が活発になされた。
 今回の指導者研修会は熊本県剣道連盟・熊本県武道振興会からの研修会内容の事前通達がしっかり行き届いていたため、参加者の意識・取り組み方にも浸透していた。参加者は普段の指導者研修会と違った内容でもあり、新たに得るものが多く、楽しみながら学べていた。中学校武道必修化に限らず、子供などの初心者指導にも役立つとの感想が多かった。