武道の振興・普及

鳥取県(鳥取市)地域社会柔道指導者研修会

期  間 平成25年5月25日(土)・26日(日)
場  所 鳥取市武道館
参 加 者 45名
(うち8名が中学校・高等学校の教員。8名中、柔道初心者の中学校保体科教諭は3名)
派遣講師 鮫島元成八段(全日本柔道連盟・教育普及委員会副委員長)、坂本道人六段(全日本柔道連盟・教育普及委員会委員、福岡大学講師)

概要

鳥取県での中学校武道必修に特化した柔道指導者研修会は3年連続3回目の開催。同県で開催された天皇・皇后両陛下ご臨席の行事と日程が重なったものの、県教育委員会・スポーツ健康教育課の岡本律子体育・スポーツ担当係長立ち会いの下、2日間で45名の参加者を得て実施された。
研修会は、1日目に中学校での武道必修に特化した内容の研修を実施し、中学校保体科教員3名(いずれも柔道初心者)が参加。2日目は講道館柔道・投の形について、主に経験者を中心に研修が行われた。また、参加者全員に、全日本柔道連盟が作成した『柔道授業づくり教本』や「柔道の安全指導」などが無償で配布された。

 1日目は、鮫島元成講師、坂本道人講師が柔道初心者の参加者にあわせて、中学校での体育授業での指導法について、全日本柔道連盟作成の『柔道授業づくり教本』の内容に則した研修が行われた。

  • ・ 指導時の留意点:頭を打たないよう段階的に指導する。指導の際の言葉遣い、振る舞いは体罰などの誤解が生じないよう十分配慮する。
  • ・ 柔道衣の着用:下ばきのはき方、帯の結び方。
  • ・ 礼法:坐り方(左足から坐る)や立ち方(右足から立つ)。座礼は、礼のときにおしりが浮かないようにする。立礼は約4秒間で、相手に対して15~20度、相手がいないときは30度で行う。など。
  • ・ 頭を打たない受け身(前受け身、横受け身、後ろ受け身)の取り方と段階的指導法:寝た状態→長座→蹲踞→立った状態→後ろへ歩きながら倒れ込んで受け身を取る。低→高、弱→強へと順番に指導することが大切である。
  • ・ 受け身(横転受け身や前回り受け身)について:安全に受け身が取れるためには、①潔さ(思い切って受け身をする)、②残心(投げる側は相手と一緒に倒れない。棒立ちで投げるとつんのめって倒れて頭から落ちやすいので注意する)、③命綱(投げる側は相手の袖を離さない。もう一方の手は相手の手を抑える。投げられる側は相手から手を離さない)の3つの要点を守るよう指導する。少しでも危険なときは、その場ですぐに改める。
  • ・ 投げ技の基本動作(吊り手、引き手、体捌き)
  • ・ 固め技(抑え技)で必要な基本動作:固め技からの逃れ方・かわし方(えびの動き)、ほふく前進。
  • ・ 固め技4種類:袈裟固め、横四方固め、上四方固め、縦四方固め(固め技は男女を分けて行うほうがよい)
  • ・ 投げ技(膝車、体落とし、大外刈り)の練習:段階的に練習し、投げる側の形ができてから相手を投げる。3つのポイント(①潔さ②残心③命綱)に注意する。大外刈りは学習指導要領に掲載されていないが、段階的に指導すれば、他の技と同様に安全に受け身が取れる(柔道授業づくり教本にも指導方法が掲載されている)。
  • ・ 段階的に行う乱取形式の練習:初心者・経験者一緒になり、相手を替えながら、二人組で、①組みあったまま足捌きを使って移動する、②力いっぱいで移動、③交互に技をかけるふりをする、④1回目はかけるふり、2回目に実際に同じ技で投げる、⑤いろいろな技を交互にかける、⑥自由に技をかけあう(乱取)。の順番で段階的に感覚を馴らしながら簡易な試合形式の練習を行う。

研修中、講師からは安全に十分配慮することがなにより重要である。生徒が危険な動作をしたり、ふざけている時は即座に止めて、改めることが繰り返し述べられた。また、学校の授業で生徒を一斉に指導する場合は、習熟度に差があり、1つ1つしっかり指導しようとすると予定していた指導内容が行えない可能性がある。「はじめは大まかに、最後はしっかり」できるように指導していくとよい、1日の研修ですぐできるようになるわけではない、配布した資料や今日学んだことを活かしてよく教材を研究してほしい、とアドバイスがあった。

2日目は、柔道経験者の指導者を中心に、柔道の「投の形」について、鮫島講師や坂本講師(世界柔道形選手権大会投の形優勝)らが模範を見せながら、投の形における技の理合や考え方の解説と実技の研修が行われた。

 研修に参加した柔道初心者の中学校保体科教諭は、「自分の勤務校は、柔道は男性教員が教える予定ですが、いつ自分(女性)も教えることになるかわからないので参加しました。怪我をさせないためにどうしたらよいか、運動の苦手(嫌い)な生徒にどう指導したらよいかがわからず、不安です。1日の研修で、全てできるようになったわけではありませんが、褒めて伸ばすこと、柔道の楽しさを伝えること、できたという達成感を感じさせることを大切にしたいと思います」(中学保体科女性教諭・初心者)。「柔道は中学・大学で授業で教わっただけです。勤務する中学校では柔道の授業を秋に10時限程度で行う予定です。研修会に参加して、今まで習ったことのある技についても、どうしてこうなるのか、理に適った説明があって大変分かりやすかったです」(同保体科男性教諭・初心者)といった感想を述べた。