武道の振興・普及

第3回全国合気道指導者研修会

 第3回全国合気道指導者研修会〔主催=(公財)日本武道館・(公財)合気会、後援=文部科学省〕は全国から80名(保健体育科教員12名、連盟推薦者他68名)の参加者が集まり、平成27年11月6日~8日の3日間、千葉県勝浦市にある日本武道館研修センターにて開催された。
 この研修会は、日本全国で合気道を指導する中学校、高等学校の教員及び社会体育指導者を対象に、学校教育における合気道の指導法に関する実技と講義を行い、学校における合気道の充実を目的として実施された。

植芝理事長
三藤理事・事務局長

■1日目(11月6日)
 開講式の主催者挨拶では植芝守央合気会理事長(合気道道主)から「平成24年に必修化が始まり、全国で40校が合気道を学校授業で実施している。国内には2,400の道場、海外では130カ国で合気道が行われているが、中学校や高等学校のような教育現場ではまだまだ普及されていない状況にある。これからは学校側と協力体制を築いていきたいと考える。全国で指導に携わる皆様には、合気道に対する理解を深め、充実した指導内容を学び、有意義な3日間にしていただきたい」と述べた。
続いて、三藤芳生日本武道館理事・事務局長が挨拶に立ち「全国から80名の指導者に参加いただいたこの研修会は、文部科学省の国庫補助対象事業として、合気会と日本武道館が共催で開催している。合気道は私立中学校を中心に採用されており、中学校ではどのような指導が求められているか知ることが大切である。今回の研修会では、参加者の皆さんには初心に帰って講師の指導を受けていただきたい。合気道のより充実した指導と発展を期待する」と述べた。
 開講式後には植芝充央講師(合気道本部道場道場長)がDVD映像と技の実演を交えながら合気道についての解説を行った。引き続き、研修室に会場を移し、富澤輝男講師(国際武道大学体育学部特任教授)による「スポーツ事故の法律問題-武道関係の裁判例から見る注意義務-」と題し、教育現場における安全への配慮についての講義が行われた。

全国指導者研修
中学校合気道指導法

■2日目(11月7日)
 2日目は中学校合気道指導法と全国指導者研修の2班に分かれ研修を行った。
 中学校合気道指導法では始めに「1年生の指導内容」として日野皓正講師が構え、体さばき、後ろ受身など基本動作の指導を行った。後ろ受身の指導では、今までの指導法研究事業の経験を活かし、4段階のステップを設け、合気道未経験者でも安全に実践できる指導法を紹介した。
 鈴木俊雄講師の「授業での指導法」では教員自身が指導できそうだという自信を持ってもらうための技術講習が行われた。鈴木講師からは「学校現場の指導では生徒に伝わりやすい簡単な言葉を選ぶ必要がある。一つ一つの動作に番号をつけるなど工夫してほしい」と指導のポイントを伝えた。
 午後は川城健講師(国際武道大学体育学部特任准教授)が「体育授業の今と武道必修化に伴う合気道の教材化について~機能的特性を重視した授業づくり~」について講義を行った。「今の子どもたちは2つの二極化が進んでいる。ひとつ『運動をする子、しない子』、一方、運動は得意であっても『一つの種目を専門的に行っているためその種目にたけているが、その他の種目がまったくできない』という二つの問題である。学校体育ではこのような子どもの実態を踏まえての授業づくりが求められている。合気道を授業に取り入れた場合のメリットは知識・技能に大きな差がなく始められること。他の運動が得意な生徒でも、いきなり得意になれないことと苦手な生徒でも萎縮しなくて済む」など合気道の授業への採択のメリットを説明した。

■3日目(11月8日)
 最終日は川城講師が体育教員役、鈴木講師が外部指導者役となり、国際武道大学学生の協力を得て、学校授業における5時間目を想定した模擬授業を行った。この模擬授業ではスマートフォンを使用し、模範映像と自分の動きを比較しながら技の習熟度を生徒自身が確認できる内容の授業を紹介した。  閉講式では林典夫講師(合気会理事)が主催者挨拶で「この3日間の研修でいろいろな体験や情報交換が出来たと思う。地元に戻り、この研修で学んだことを活用し、指導に当たっていただきたい」と述べ、3日間を締めくくった。
【参加者の声】
 第1回に続いて、今回で2回目の参加となりました。改めて指導するのが難しい種目であると実感した研修でした。限られた授業数でどのくらいの種類の技を指導することが妥当なのか、さらに完成度はどこまで求めたら良いのか、実際に授業を想定すると頭を悩ませてしまいます。自分自身が頭の中で考えながら動くことになるので、生徒へ指導することに自信を持てません。しかし、合気道という教材が安全面や左右のバランスがとれた身体運動である事などから学校現場で普及される可能性があると思いました。地元に戻ってから自分自身が道場に通いたいという気持ちになりました。そして生徒たちが喜んでくれる武道授業を展開していきたいと思います。

(保健体育科教員・男性)

 昨年に引き続き、学生として参加させていただきました。合気道を指導していく上で大切なことを授業展開を中心に法律、歴史といろいろな側面から学ぶことが出来、とても勉強になりました。来年度より教員として学校現場に関わることが決まり、昨年よりも学校現場へ合気道を取り入れるためにはどうしたらよいかを深く考える良い機会になりました。実際に本部の先生方から授業展開の手本を見せていただき、授業と部活動での指導の違いを改めて感じました。合気道は他の球技等とは違い、スタートラインに差がほとんどなく始められるので授業として取り組みやすいと思います。これから合気道を普及する一員となれるよう努力していきたいと思います。

(大学生・女性)