出版事業

日本武道館発行の単行本

剣道 その歴史と技法

埼玉大学名誉教授
大保木輝雄

 剣道の技法は個人の力量だけを問題にするのではなく、相手と自分の「間」を軸とした剣術(剣の理法への気づき)へと展開した。本書は戦国末期から江戸時代初期を起点に、今日に至るまでの剣道の歴史的発辰の経緯を示した。戦国期以前の剣術の在り様を認識したうえで改めて各時代の流れに沿った剣道史を考えてみたいという筆者の思いを実現すべく、連載終了後5年のときを経てついに単行本化。

四六判・上製・516頁
2,640円
内容

目次

  • 第一章 戦国武術から近世武芸へ
  •   第一節 剣道前史
  • 1 剣道の歴史書
  • 2 刀剣の歴史と剣術
  •   第二節 殺人刀・活人剣―技術を支える思想
  • 1 新陰流と徳川家康
  • 2 殺人刀・活人剣の技法
  • 3 「型稽古」から「撃剣」へと引き継がれたもの
  •  
  • 第二章 型文化を読む
  •   第一節 組太刀に託された世界
  • 1 「一刀」の創出
  • 2 組太刀は「剣道の真理」を示す
  • 3 組太刀は流祖の「くせの勢い」の体系
  • 4 流祖の「一刀」の停滞と復活
  • 5 剣道と日本剣道形
  •   第二節 「型」(組太刀)とは何か
  • 1 型剣術継承者の伝える「型」とは
  • 2 型と撃剣の共存
  • 3 近代剣道の型論
  •  
  • 第三章 武芸心法論の展開
  •   第一節 熊沢蕃山の剣術心法論―体験知から理論知へ
  • 1 戦闘に臨む者たちの体験世界
  • 2 剣術に受け継がれたもの
  • 3 熊沢蕃山と『芸術大意』
  • 4 熊沢蕃山の後継者
  •   第二節 天狗芸術論―剣術の心法から心法論へ
  • 1 佚斎樗山とその時代
  • 2 『天狗芸術論』について
  • 3 戦闘の場・武芸の場・日常世界の場
  • 4 幕末剣術論と気
  •  
  • 第四章 型剣術から試合剣術(撃剣)へ
  •   第一節 試合剣術(撃剣)がもたらしたもの―その効用と問題点
  • 1 防具剣術の発展経緯について
  • 2 藤田東湖の『常陸帯』にみる剣術の諸相
  • 3 中西家にみる組太刀と竹刀稽古の関係
  • 4 剣道の心法論と嘉納柔道の修心論
  •   第二節 浮上する撃剣―身分を超えた剣士の交流
  • 1 武士の武者修行
  • 2 農村部での剣術の興隆
  • 3 農民剣術の代表・柳剛流
  • 4 武者修行と撃剣
  •   第三節 近代剣道のルーツ・「剣術六十八手」と千葉周作
  • 1 千葉周作の実態を知るための資料について
  • 2 『剣術名人法』にみる周作の剣術論
  • 3 「剣術六十八手」と「剣術打込十徳・剣術打込台八徳」について
  • 4 「剣術物語」にみる周作の活動について
  •  
  • 第五章 撃剣から撃剣大会へ
  •   第一節 講武所の開設と剣術
  • 1 講武所設置の背景と意図
  • 2 剣道の歴史書に記述された講武所と剣術
  • 3 講武所とは何であったのか
  •   第二節 撃剣興行と春風館―山岡鉄舟の剣術理念
  • 1 撃剣興行と春風館
  • 2 高野佐三郎による山岡鉄舟の受容
  • 3 鉄舟が提唱した剣術理念「無敵の境」とは
  •   第三節 撃剣再興論と警視庁の剣術奨励―専門家の復活
  • 1 剣術の復興と専門家の養成
  • 2 川路利良の撃剣再興論
  • 3 警視庁剣道の整備
  • 4 地方に設置された巡査教習機関
  •  
  • 第六章 撃剣から剣道へ
  •   第一節 内藤高治と武道専門学校
  • 1 武徳会と武道専門学校
  • 2 内藤高治の剣道
  •   第二節 正課編入運動によってもたらされたもの
  • 1 武道の正課編入運動はいつから始まったのか
  • 2 嘉納治五郎の提唱した「柔道」
  • 3 嘉納の剣道へのまなざし
  •   第三節 高野佐三郎と東京高等師範学校
  • 1 東京高等師範学校と嘉納治五郎
  • 2 高野佐三郎と東京高等師範学校
  • 3 剣道形(剣道統一形)の制定とその意義
  •   第四節 富永堅吾と学生剣道
  • 1 話題の書となった『最も実際的な学生剣道の粋』
  • 2 『学生剣道の粋』発刊の意図
  • 3 『学生剣道の粋』についての今村嘉雄の見解
  • 4 富永の学生時代
  • 5 指導者としての富永と時代背景
  • 6 弟子たちによって出版された富永の遺稿
  •  
  • 第七章 激動の時代(戦前・戦中・戦後)を生き抜いた剣士達
  •   第一節 佐藤卯吉と戦後剣道
  • 1 戦後剣道に受け継がれたものは何か
  • 2 教育剣道と佐藤卯吉
  • 3 佐藤卯吉の剣道論
  •   第二節 戦前の剣道と戦中の剣道
  • 1 戦前・戦中・戦後を生きた剣士の信条
  • 2 「剣道の理念」制定メンバーが育った時代(明治後期~昭和20年)
  • 3 戦時体制と剣道
  •   第三節 日本の伝統スポーツとしての剣道
  • 1 戦中に結成された思斉会
  • 2 現代剣道の礎を築いた人々の言葉
  • 3 戦前の剣道と戦後の剣道は何が違うのか
  • 4 中野八十二の体験的剣道論
  •   第四節 剣道の復活を図った人々
  • 1 戦後剣道の復活
  • 2 撓競技の発明と撓競技連盟
  • 3 剣道連盟の設立と「剣道」
  • 4 戦後剣道の歩みと課題
  •  
  • 第八章 現代剣道の出発点と「剣道の理念」
  •   第一節 スポーツの理念と学校剣道
  • 1 戦後剣道の出発点である『学校剣道─指導の手びき解説─』の内容について
  • 2 「過去の剣道」の捉え方について
  • 3 「スポーツとしての剣道」の捉え方について
  • 4 「教育としての剣道」の捉え方について
  • 5 剣道の発展のために
  •   第二節 「剣道の理念」を制定
  • 1 「剣道の理念」はなぜ制定されたのか
  • 2 「剣道の理念」を制定した人々が考えていたこと
  •   第三節 現代剣道を再考する
  • 1 武道の世界と競技
  • 2 戦後武道
  • 3 体育・スポーツとして再出発した剣道とその問題点
  • 4 体育・スポーツとしての剣道と伝統文化を伝える剣道の接点
  • 5 世界に開かれた剣道と今日的課題
  • 6 日本刀の美と剣道の美

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