武道の振興・普及

第3回全国少林寺拳法指導者研修会

 第3回全国少林寺拳法指導者研修会〔主催=(公財)日本武道館・(一財)少林寺拳法連盟・日本武道協議会、後援=文部科学省〕は千葉県勝浦市にある日本武道館研修センターにおいて平成27年9月20日~22日の3日間にわたり、全国から募集定員をはるかに上回る106名が参加し、開催された。

新井会長

■1日目(9月20日)
開講式の主催者挨拶では新井庸弘(一財)少林寺拳法連盟会長が「年齢制限を設け、若手の指導者育成・資質向上を目的とし中学校・高等学校の教員を中心に参加者を募った。少林寺拳法の指導者は①教えと技法に精通していること、②評価基準を持っていること、③正しい指導法を身につけていることが重要である。この研修会ではより良い指導法を身につけ、自らの研鑽に励んでほしい」と述べた。続いて、三藤芳生日本武道館理事・事務局長から「武道必修化が始まり、4年目を迎えるが実施比率は選択時代とほとんど変わっていない。複数種目を実施している学校が全国に約100校ある。日本武道館と日本武道協議会では複数種目を今以上に実施できるよう文部科学省へ働きかけをしている。少林寺拳法は組手主体でお互いを高め合うことができる特性を持っている。現在の学校教育では相手を尊重することが欠けており、指導が必要と考える。指導者は自分の力量分しか生徒への指導ができない。自己の指導力を高めるようしっかり研修し、充実した3日間になるよう期待する」と述べた。
開講式終了後さっそく、宗由貴(少林寺拳法グループ総裁)特別講師による「進化する指導者を目指して」と題して講義が行われた。「変化という言葉には良い変化と悪い変化の二面があるが、少林寺拳法の指導者の皆さんにはよい変化、つまり『進化』する、一歩でも前進する指導者になっていただきたい」と自身の思いを受講者に伝えた。引き続き、会場を大道場へ移し、実技研修(基本技)を行った。夕食後には12班に分かれ共通の2テーマについて各班で討議が行われた。

三藤理事・事務局長

■2日目(9月21日)
新井特別講師による「(一財)少林寺拳法連盟の使命と在り方」についての講義が行われた。
その後は初心者と経験者を班別に分け、終日実技研修に時間を費やした。初心者班は学校での授業実施に向け、導入部分から約6時間程度の基本的動作の確認を行った。初心者が指導者として授業で実演できるよう剛法(上受蹴、下受蹴)と柔法(小手抜、上膊抜)、さらには天地拳の習得を目指し、繰り返し確認作業を行った。号令には数字の掛け声ではなく、自ら実践した時に動きやすい簡単な言葉を選択するよう工夫がみられた。担当した中島正樹(富士見丘中学高等学校教諭)特別講師からは「教員の達成感は、号令に合わせ生徒を思い通りに動かせたときに味わうことができるものだと思う。

やる気のない生徒のモチベーションを上げ、どう発展させるかを含め、教員としての力量が試されるので工夫してもらいたい」と述べた。この日の総仕上げに参加者の前で演武披露が行われ、経験者からは技の完成度の高さに拍手が送られた。
また、中島特別講師の講義では6月に行われた「平成27年度中学校武道授業(少林寺拳法)指導法研究事業」における少林寺拳法授業を通して中学生の心境の変化について報告があった。
菅野特別講師

■3日目(9月22日)
 班別討議の内容を3つの班が代表して発表した。意見の中には「学校現場では相手を否定せず、認めたり、褒めたりして、生徒自身の存在価値を理解させることが重要。自信を持たせ、居場所を作ってあげること」や「指導者がその人にあった指導をしてあげることが必要。自分の背中を見せ、目標・ゴールに近づくためにどう努力し、行動したらよいか一緒に考えることが重要だと思う」など、指導する前にまずは、自分自身が「自己確立する」ことで指導者としてのあるべき姿・理想を持って取り組むことが大切であると参加者全員で再確認した。
引き続き、菅野純(早稲田大学名誉教授)特別講師による「少林寺拳法の教育的意義について」の講義が行われた。弟子や子どもたちが「問題を抱えている場合には、その問題をより小さくしてあげることが教育だと考える。また、よい部分を育ててあげることで相対的に問題が小さくなり解決できることがある。子どもを指導する上で成長の事例や過程を指導者がどう捉えるかが重要。少林寺拳法の教育力は①健全な自己イメージの獲得、②人間理解力の獲得、③師→成長モデルとの出会い、④豊かな人間関係力の獲得、⑤行動の切り替え・節度・けじめの力・覚悟などの獲得、⑥くじけない勁(つよ)い心の育成が重要である」と述べた。講義終了後、閉講式を行い、全日程を終了した。

【参加者の声】
 武道が必修となり柔道場のない本校では体育館で剣道を実施していたのですが人数が増え、防具も全員着けることが出来ない状況にあり、用具、大きなケガの心配がなく、実施できる武道は他にないか悩んでいたところ、今回の研修会で何かつかめればと申込みをし、参加をしました。本当に手探りで、はじめは高段者の先生方の中に入っての研修は「無理だ」と思っていましたが、講義や実技を通して、いつも自分自身が生徒へ「あきらめるな!」、「自分の可能性を信じろ!」と言っていたのを思い出し、改めてがんばろうと思いました。先生方の熱意ある指導に感謝します。学校に戻って生徒たちに伝えたいと思います。(女性)

 各県の先生方とお話することが出来、充実した時間を過ごすことが出来ました。実際の教育現場で少林寺拳法を伝える大切さ、そして難しさを知ることができました。今は5年一昔と言われるくらい時代の流れが早く子どもたちの興味のある事、考え方が多様になってきています。宗総裁の講義で「進化する指導者」として、変化する社会に適合した先を見る目を持った者になれという強いメッセージだと思います。その中で人と向き合う事、相手の事を自分のこととして考える事等、これからの自分の進むべき道を指し示していただきました。今後は、後輩達に分かりやすく、理にかなった指導を心がけたいと思います。(男性)