武道の振興・普及

福井県(福井市)地域社会(柔道・剣道)指導者研修会

期間 平成22年8月10日(火)・11日(水)
場所 福井県立武道館
参加者 柔道18名・剣道8名
中央講師 【柔道】鮫島元成七段、楢﨑教子女子四段
【剣道】山本重美教士八段、髙橋秀夫錬士五段

概要

 福井県では、県教育委員会が、県内中学校の保健体育教員に対して、平成21~23年の3年間のうちに、武道必修化の研修に必ず1度は参加するよう、市町村教育委員会を経由して通達している。

柔道
 鮫島講師を中心に、『柔道 授業づくり教本』の内容に沿い、特に安全面の留意点を説明しながら進めた。礼・座礼・帯の締め方からはじまり、押し合い・引き合いといった遊びを取り入れた体重移動での体ほぐし、受け身、寝技、立ち技の指導法に移った。寝技では抑技を連続して一つの流れとして行う「世界一周」を行った。立ち技では膝車・体落・大腰などの指導法を行ったほか、楢﨑講師による大内刈の実技指導も行った。絞め技・連絡技の指導も行い、絞め技ではお互いに加減をしながらではあるが、「落ちる」のがどういう感覚かを体験し、「活を入れる」方法も簡単にではあるが学んだ。最後は相手を替えながらの乱取り稽古も行った。実際の授業で生徒たちに対する評価の仕方については、評価を点検確認に置き換えたらよいのではと鮫島講師からアドバイスがあった。例えば帯の締め方はどちらが上手か。寝技が正しく出来ているかなど、激しい攻防をしなくても評価の方法があると紹介があった。
 鮫島講師は安全に十分配慮することが重要であると繰り返し述べ、「なぜ、柔道を学ぶのか。柔道の受身は日常生活にも活かすことができる一つの技である。また、相手を投げる、抑える、絞める、といった技は、相手を制するための技だが、それらをお互いにかけあうからこそ、引き手を離さないことの大切さや、怪我の危険性について体で知ることができる。これは英語の勉強などでは学べない柔道の特性である。危険だからやらせないのであれば、武道をあえて必修化して学ぶ必要はない。保健体育の教員のみなさんは、今回、短期間で武道について、いろいろな内容を覚えなくてはならないため、大変なご苦労があると思うが、どうか、この柔道の特性を含め、武道の良さをきちんと伝えていただければこの上もない喜びである」という言葉で締めくくった。

剣道
 髙橋講師が『剣道授業の展開』中の授業の進め方について、どのように時間配分をして、授業計画を立てるかなどを解説した。バレーボール・新聞紙・シャボン玉等を使った「遊び」の要素を組み入れた指導法を行い、評価の仕方の具体的な例も挙げられた。
 山本講師からは、礼法・心構えからはじまり、竹刀の扱い方、素振り、基本打突、足さばき、気剣体一致の動き、手の内の使い方など、おおまかに剣道における指導の要点を説明しながら基本動作を学んだ。その上で、防具の付け方、実際に防具をつけて切り返し・打ち込み・掛り稽古を行った。剣道特有のケガの危険性も踏まえて、審判法も行い審判の心構えや役割分担、挙措動作などを学んだ。また、「木刀による剣道基本技稽古法」も『剣道授業の展開』付録DVDを視ながら、終始学習した。最後に全員で地稽古を行い、意見交換・総評を行った。
 山本講師は「この2日間で全てを習得することはとても困難である。体育の授業を実施する場合、13時間程度(実際はもっと少ないかもしれない)の授業の時間内に、教本にあるような試合をするところまで進めるのは大変難しいだろう。剣道では陰打ち(一人稽古)という言葉がある。相手を想定し、自分一人で稽古をする(させる)ことが重要である。授業を行う場合、そうした一人稽古をさせるなど、授業の内容には工夫が必要である」とまとめた。

 また、柔道・剣道とも生徒たちに興味・意識づけるには、まず先生自身が柔道・剣道それぞれの特性・特有を十分理解してもらわないと、中学校で武道が必修化になった意味が薄れてしまう可能性がある。まずは先生自身が勉強して欲しいと、鮫島・山本両講師から話があった。その上で、受け身や面打ちなどで痛みを伴う可能性があるものは生徒にやらせるだけでなく、先生自身も必ず痛みを知っておかないと、柔道・剣道嫌いの生徒が生まれてしまう。また、必ず遊びの要素を取り入れて、遊びから武道につながる授業の工夫を求めた。