武道の振興・普及

鳥取県(米子市)地域社会柔道指導者研修会

期間 平成24年5月19日(土)~20日(日) 
場所 鳥取県立武道館(米子市両三柳3192-14)
参加者 67人(19日は約35人)
派遣講師 浅野哲男(公益財)全日本柔道連盟教育普及委員会副委員長
髙橋健司(公益財)全日本柔道連盟審判委員会委員、中学校武道必修化対策
チームメンバー

概要

 鳥取県では23年度も同時期、同じ柔道で特化型研修会を行っており、2年連続の実施となった。
 19日の参加者中約10人が教員、更にその凡そ半分が保体科で、白帯の女性も混じっていた。また外部指導者も約5人参加した。
 開会式、「従うべき指導法の展示ではなく、1つの提案をするので生かして欲しい。会の流れを止めても構わないので疑問が無くなるまで質問して欲しい」と浅野講師が挨拶で抱負を述べ、その趣意に沿い、既に年度に入った「武道正課授業」指導の実質を追った研修内容になった。
 はじめに吉田朋幸県教委スポーツ健康教育課係長が、県の武道必修化の実情に関し講話を行った。
 採用種目は柔道75%、剣道25%、相撲1校(複数採用あり)で、県西部は柔道が多く、東部は柔・剣道半々。
 外部指導者導入に備え、人材バンクのリストアップも柔連12人、剣連20人ほかに警友会という警官OBで完了している。また県下全校に、全柔連「授業づくり教本」と全剣連「授業の展開」2冊を配布したうえ、更にそれら2書の詳細緻密な内容を考慮し、簡単に自分の 知りたい箇所に行き当るよう「手引の手引」とも言うべきダイジェスト本(A4 45ページ) を作りやはり全校に配ったと報告し、ケガをしないよう大きな成果をと結んだ。
 講師2人は中学校の教育現場での経験が長く、また中学時代の師(浅野)弟(髙橋)の間柄でもあり、時間によって分担するのではなく、得意な分野になると臨機応変に相互に譲り合って指導した。
 参加は高段者から全くの初心者までを含むため、習熟度に合わせ帯で色分けをし、安全な実習に配慮した。
 浅野講師は、昨今叫ばれている柔道の危険性について、事故の内容が精査され真の原因が合理的に突きとめられているとは必ずしも言い切れず、従って臆して受け身だけの授業になってしまうことなく、全力で攻防を展開する面白さを伝えて欲しいと語り、併せて柔道がまず受け身から習う、負ける(投げられる)ことから始まる事の真の意味を伝えて欲しいとも述べた。これに沿って実技でも、まず生徒の位置取りを畳の境目の線を使って間隔を十分取らせる、仰向けに寝て手だけを打つ受け身から次第に高くしていく、2人1組で行う場合も転がす(投げる)方の動作が投げ技に発展して行く、2人組んで回りながら足技を出すなど、未経験中学生の視点に立った実地の指導法を研修した。安全指導の講義では、長野、大阪などの実例を挙げ、現在指導者に何が求められているか、普段何をしておかなければならないかを、生徒の観察、文書作成、保険加入、掲示物など細かな部面に亘って説明した。質疑応答では「受け身を取る時の足の使い方について」「指導における生徒間の体格・身体能力差への対応について」などの質問が出、講師からはそのまま指導に応用できる回答が示された。
 高橋講師は現職として指導している豊富な経験から、受け身を相対動作で練習する事を通して「持ちつ持たれつ」の柔道の理合いを自然に学ばせる、手足が無くても生きている人はいるが頭が無い人はいないと頭部を守ることの大切さを学ばせる、性的接触と誤解されることを避けるため、女子指導における言葉の重要性を知る、自分は前回り受け身は技の攻防の中で使わないので教えない等々、具体的な指示・話題を随所に挟んだ。またこれまで講道館で伝統的に用いられてきた用語と学習指導要領等に出て来る用語との違いを特に時間をとっ
て説明した。
 2日目は審判法を中心に研修した。高橋講師が主に担当し、豊富な審判経験から、実際の試合での得・失点の解釈、試合場開始線の必要性、ジュリーの役割と実際、足取り禁止に至った経緯、欧州審判の実状、現IJFの指導の仕方、試合中の柔道衣の乱れ、場内外の判定等々について、笑いを誘いながら精力的に解説。午後は現役中学生モデルチームによる模擬試合をサンプルケースに、実際の試合で見られる諸問題の説明を行った。
 ある男子保体科教員の参加者は、専門はバスケットボールで白帯。自校には畳があり、柔道衣も上だけだが揃っている。柔道部が無いので授業でもその支援が期待できないが、他教科教員に黒帯の者がいるので場合によって協力を求めたい。今の子供たちにとって「他人と触れ合う」という貴重な時間であるし、礼を教えられる時間でもあるので大切に考えている。 女子も以前、柔道を経験させたら、熱心に面白がってやっていたので、期待できるところは大きいと思うと語った。
 別の男子教員は野球が専門、大学時代に黒帯はとったがそれっきりの「ペーパードライバ ー」だったので受講した。口には出さなかったが本人なりの手応えがあったようだった。