武道の振興・普及

第6回全国中学校(教科)柔道指導者研修会

第6回全国中学校(教科)柔道指導者研修会
主催 (公財)日本武道館、(公財)全日本柔道連盟
後援 文部科学省
期間 平成27年6月19日(金)~21日(日)
会場 日本武道館研修センター(千葉県勝浦市沢倉582)
講師 講師・助講師一覧表
日程表 日程表
参加者数 80名

本研修会は中学校武道必修化に伴い、主に柔道を専門としない保健体育の先生が授業で安全に楽しく効果的な指導ができるよう、指導力の向上を目的に実施されている。6 回目を迎える今回は、昨年11 月に行われた平成26 年度中学校武道授業(柔道)指導法研究事業で討議された検討課題を組み入れて、各都道府県での伝達講習も視野に入れ、授業に直結する内容で実施された。

三藤芳生
日本武道館理事・事務局長

高橋 進 全日本柔道連盟
教育普及委員会副委員長

◆1日目(6月19日)
開講式では、主催者を代表して(公財)日本武道館 三藤 芳生理事・事務局長が「本研修会は中学校武道必修化の充実を図るために国庫補助を受けて実施している。武道必修化は3年が経過し、大きな事故も無く順調にきている。本研修会では、安全で楽しく効果の上がる柔道指導について、昨秋の指導法研究事業で練り上げ、本研修会に臨んでいる。参加された先生方の指導力向上と指導内容の充実が中学校武道必修化における評価になるのでしっかり研修をしていただきたい」と挨拶した。
初日は全日本柔道連盟指導者養成特別委員会(スーパーバイザー)を中心に講義が進められた。尾形講師の講義では授業づくりの理念と考え方について、「現場に則した教え方が大切である」。佐藤講師からは、柔道における安全指導の考え方と実際につて、「柔道の特性を踏まえた指導計画書の作成、怪我や事故が起きた時の対応が大事である」。鮫島(元)講師は、学校教育における講道館柔道の役割について、「最終的に嘉納治五郎師範が考えたのは人間教育=教育的な指導である」。與儀協力者は柔道の基礎知識、柔道の歴史・特性、柔道の学習指導上の約束事について、「嘉納治五郎師範は柔術から柔道への発展及び世界への普及の過程で、伝統的な行動の仕方や礼儀作法などと関連づけて、柔道の楽しさ・技のすばらしさを理解させることが大切である」。浅野講師は、「柔道衣の取り扱い・着脱、礼法」。渡辺講師は、授業の導入段階において実施する準備運動で「音楽を使って、リズミカルなウォームアップを取り入れることで生徒をあきさせない工夫が必要であるといった、それぞれの講師や協力者の立場から柔道授業を展開していく上でのポイントが指摘された。
また、事例発表では昨年に続き都立青鳥特別支援学校における実践を角杉助講師が映像を交えて紹介した。「安全面の配慮から生徒には技を限定し、身を守る事の大切さ(受け身)を教える」といった実践例が報告された。意見交換会では、事前に授業での課題を参加者に質問した上で、共通項目として「授業協力者との効果的な連携の在り方」また、選択項目では効果的な指導の工夫(柔道の基礎知識)、安全指導の工夫(基本動作・受け身)、投げ技(膝車・体落とし・大腰)、抑え技や女子生徒への効果的な指導の工夫など8班にわかれ班別協議を実施した。

◆2日目は昨年11 月に行われた指導法研究事業に参画した(公財)日本中学校体育連盟柔道専門部全国9 ブロック協力者の指導案にそって模擬授業が行われた。笠原・中嶋協力者からは、体さばきなどの基本動作の指導について「姿勢、組み方、進退動作・崩し(八方の崩し)、体さばき(右足前さばき・右足前回りさばき)、ハンガーを使用しての投げ技練習等」が、林協力者からは受け身の習得において「畳をたたく際の手の位置、目線等」が、浜岡・遊佐協力者からは投技の指導場面で「受と取が互いに協力し両膝を付いた段階からスモールステップで進めることで、受は受け身・取は技の習得が図れる」が、他に梶尾・植田・濵名氏ら各模擬授業を行った協力者から、指導における留意点などについて実践発表があった。意見交換会では、指導上の諸課題について、授業を進めて行く上での生徒への注意点などについての班別協議を行い、二日間のまとめと最終日の発表に備えた。

◆最終日は前日の協議内容結果を各代表者が発表した。
発表内容一部抜粋
①足形君(段ボールで作る)を使い、足の動きを練習させる。
②体の崩し、作り、体さばきを市販のハンガーを用いて行う。
③「受・取」の他にもう一人がいると危険予測ができる。(3人一組)
④受け身の指導手順について、回転する→畳をたたく→後ろ受け身→横受け身→体さばき・膝車→体落とし→大腰→前回り受け身の順に指導する。
⑤怪我防止の観点から、全員が同じ方向で投げ技を行う。
⑥生徒の実態に応じながら「安全」と「柔道の面白さ」などの特性を味わうことができるように指導を工夫する。
最後に高橋進講師から「中学校武道必修化の授業は先生方がお手本です。安全面に十分注意して授業を行ってください。また、本研修会で習得したことを各県に戻り伝達してください。」とまとめ、全日程を終了した。